一般診療でよく出会う、皮膚科疾患に関係する可能性がある症状　尋常性白斑

定義・概要
尋常性白斑は後天性に生じる脱色素性疾患の一つであり、全人口の約0.5～1％が罹患するといわれている。臨床的に神経支配領域とは無関係に生じる非分節型白斑と、皮膚分節に沿って病変がみられる分節型白斑に大別される。
診察時のポイント
非分節型白斑は左右対称に生じることが多く、一方、分節型白斑は神経支配領域に沿う分布を示すため、病型を把握するために全身の診察を行うことが必須である。白斑は色調以外の自覚症状を伴うことがほとんどないため、特に背部や後頚部など患者自身では容易に確認できない部位の診察も丁寧に行う必要がある。
診断の流れ
境界明瞭な脱色素斑を後天的に認めた場合、まず本症を考えるが、下記の鑑別疾患を除外する必要がある。病理組織学的には表皮メラノサイトの消失以外の特徴的な所見に乏しいため、診断には必ずしも皮膚生検は必須ではない。
皮膚の炎症所見に乏しいため、通常患部では紅斑や鱗屑、掻痒を伴わないが、発症初期に淡い紅斑や軽度の痒みを伴う症例も存在する。
尋常性白斑と診断した場合には、いつからどの部位に発生し、どのように拡大したのか問診、視診を行う。これらは病型の決定に必要であり、病勢を評価し治療方法を選択する際にも重要となる。20〜30%に家系内発症が認められるため、家族歴の聴取も忘れないように気をつけたい。特に思春期前の小児における尋常性白斑は，思春期以降の発症例と比較して、ケブネル現象を伴うことが多く、自然消退傾向を認める例が多く存在し、家族歴を伴う症例の割合が高いことが報告されている。
非分節型白斑の約20％に甲状腺疾患や円形脱毛症などの自己免疫疾患の合併がみられるため、視診や問診でその合併が疑われる場合は血液検査などでその有無を精査する。また、皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎や乾癬に尋常性白斑が合併することも多いため、全身の皮膚を丁寧に確認することが重要である。
鑑別疾患
【Vogt-小柳-原田病】ブドウ膜炎・骨髄炎・難聴を三徴とし汎発性脱色素斑を生じる。感冒様症状を前駆症状として認めることがある。
【Sutton母斑・Sutton現象】色素性母斑や悪性黒色腫の周囲に脱色素斑がみられることがしばしばあり、それぞれSutton母斑、Sutton現象とよばれる。メラニン関連タンパクに対する自己免疫反応で生じると考えられている。
【癜風及びその他の感染症】真菌ではMalassezia furfurの表在性感染である癜風が代表的で、脂漏部位に好発する。癜風による白斑ではメラノサイトの数は減少しておらず、角化細胞へのメラノソーム輸送の阻害や、チロシナーゼ活性が低下することにより生じると考えられている。また、Treponema pallidumによる感染である梅毒の第2期疹の一つとして、米粒大から爪甲大程度の境界不明瞭な不完全脱色素斑がみられることがある。この色素脱失は色素産生能の低下が原因といわれている。その他、Hansen病やHIV感染患者においても白斑が生じることがある。
【白色粃糠疹】単純性粃糠疹ともよばれ、小児の乾燥性湿疹やアトピー性皮膚炎などに多くみられる。ときに体部白癬との鑑別が必要である。
【老人性白斑】老化によるメラノサイトの減少が原因と考えられており、3～4mm程度の境界明瞭な円形もしくは不整形の脱色素斑が四肢体幹に出現し加齢とともに増加する。
【脱色素性母斑】非遺伝性で、先天的に皮膚の一部において不完全脱色素斑を認める。メラノサイトの局所的な機能低下によるもので、生涯大きさ、分布、数は変化しない。

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